本記事では、起業するために必要な予備知識やその方法・手続きについて詳細にまとめています。これから起業する予定の人は是非参考にして下さい。
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起業の種類について
起業には大きく分けて2種類あります。1つが個人事業主で、もう1つが法人設立(いわゆる会社設立)です。
メリット | デメリット | |
個人事業主 | 法人設立に比べて比較的手続きが簡易。税金の計算も比較的容易。 | 法人設立に比べて比較的社会的信用度が薄い。赤字の繰越が3年までしかできない。 |
法人設立 | 利益が出た時に節税対策が可能。法人の社会的信用を得ることができる。 | 法人設立の際の手続きが複雑。ファイナンスの分野の専門知識が必要。 |
個人事業主について
上の表にまとめてあるように、個人事業主は法人設立に比べて手続きが簡易な他、税金の計算が楽なことがメリットとして挙げられます。個人事業主として起業するには納税地を所轄する税務署に対して「個人事業主の開業・廃業等届出書」を提出するだけで設立手続きは終わりです。これは原則、事業の開始等の事実があった日から、1ヶ月以内に提出します。厳密には、届出を出さなくても事業所得が発生していれば、確定申告をすることになるので個人事業主となります。
個人事業主になれば、1年に1度事業収支を計算し、所得税額を計算するための「確定申告」が必要になります。
個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類の申告方法があります。それぞれのメリット・デメリットは以下のようになります。
メリット | デメリット | |
白色申告 | 単式簿記と呼ばれる簡単な記帳が可能。 | 控除額が無い。 |
青色申告 | 節税面でメリットが大きい。10万控除または65万円の特別控除が受けられる。 | 複式簿記と呼ばれる複雑な記帳が必要。 |
個人事業主では青色申告でないと節税のメリットが無いので、基本的には青色申告を狙うべきです。複式簿記が必要ですが、確定申告の際にファネーフォワードクラウドやfreeeのようなクラウド型の確定申告サービスを利用することで煩雑な手続きを楽にすることができます。
個人事業主は手続きが基本的に楽ですが、法人に比べて社会的信用が無いことは把握しておくべきです。
法人設立について
法人設立は、個人事業主に比べて一定の社会的信用が得られる事が特徴です。また、取引制限が低くなり、銀行からの借り入れや資金調達の面においても個人事業主に比べて非常にスムーズに進む事が多いです。
手続きが煩雑というデメリットがありますが、その分経済的な面で見ると非常にメリットがあります。個人事業主は赤字を3年しか繰越すことができませんが、法人の場合は9年間もの繰越が可能です。節税面で考えると圧倒的に法人設立に軍配が上がります。
法人設立をするためには、複数の書類が必要です。
・源泉所得税関係の届出書
・消費税関係の届出書
書類は状況に合わせて複数提出する必要があります。個人のブログやメディア等を参考にするより、国税庁が公開しているページのフローが最も信頼できます。
以下に、必要な書類の届出を表にまとめておきます(国税庁公式HP参考)
対象 | 届出の名称 | 提出先 | 提出期限 |
法人を設立した時 | 法人設立届出書(※1) | 納税地の所轄税務署 | 法人設立の日以後2か月以内 |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 最初の事業年度の確定申告書の提出期限まで | ||
減価償却資産の償却方法の届出書 | 最初の事業年度の確定申告書の提出期限まで | ||
役員や従業員に報酬、給与を支払うとき | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 給与支払事務所等の所在地の所轄税務署 | 給与支払事務所等を設けてから1か月以内 |
源泉所得税の納期の特例を受けるとき | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時(給与の支給人員が常時10人未満の場合) | |
青色申告で申告したいとき | 青色申告の承認申請書 | 納税地の所轄税務署 | 法人設立の日以後3か月を経過した日又は最初の事業年度の終了日のいずれか早い日の前日まで |
資本金の額又は出資金の金額が1,000万円以上のとき | 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 速やかに |
法人設立の際は法律もいくつか絡んでくるので手続きに最新の注意を払う事が必要です。さらに税務周りの処理もかなり複雑なため、通常は行政書士や税理士等に頼る部分が多いです。効率の観点からも自力でこなすのは非効率であるため、特に初めて起業する方はこういった専門家の方の力をしっかりと借りていきましょう。
個人事業主と法人の比較
個人事業主 | 法人 | |
開業/設立の手続き | 開業届け提出のみ(無料) | 定款作成・登記を行う(約20万前後) |
税金 | 法人に対して節税の上限が小さい | 節税対策の範囲が大きい |
赤字の繰越 | 3年(青色申告) | 9年 |
事業廃止 | 廃業届け提出のみ | 解散登記・公告を行う(約数万円) |
社会的信用 | 低い | 高い |
生命保険 | 所得控除 | 全額経費 |
社会保険 | 5人未満の場合会社負担分なし | 会社負担分あり |
会計・経理 | 個人の確定申告 | 法人決算書・申告 |
起業の手続き
個人事業主の場合
上にも記載したように、個人事業主になるためには基本的には税務署に開業届を提出するだけで、特に費用もかかりません。ただし、青色申告や従業員を雇う場合には開業届とは他に別に税務署への届出が必要となります。
原則開業から1ヶ月以内に、住所を管轄する税務署にそれぞれ届出を提出しましょう。わからない事があれば、税務署に聞くと正しく詳しい回答が得られると思います。
2016年以降、マイナンバーを書類に記載する必要があるのでマイナンバーカードを持参する必要があります。通知カードしか手元に無い場合は、通知カードとは別に本人確認のための身分証明書(運転免許証やパスポート)が必要になります。忘れず持参しましょう。
法人設立の場合
定款の認証
会社の組織や運営における基本となる原則である「定款」を作成します。定款は公証人による認証を受ける必要があり、その認証に5万円の手数料がかかります。会社を設立するためにはまず最初にこの定款を作成しましょう。定款は、株主や取締役を拘束する力があるものなので非常に重要です。
通常紙での定款原本には印紙税として4万円分の収入印紙を貼る必要がありますが、電子定款であればこの4万円を節約する事ができます。電子定款を作成するには意外と手間暇がかかってしまうため、専門家に依頼するのが良いとされています。
法務局で登記を行う
定款の認証を終えたら次に法務局での登記を行います。登記には、定款+登録免許税を支払う必要があります(資本金の0.7%、最低15万円から)。さらに、出資金の払い込みを証明する書類が必要です。
登録免許税については資本金によって費用が異なってきます。
資本金額 | 登録免許税 |
2,143万円未満 | 15万円 |
2,143万円以上 | 資本金×0.7% |
税務署へ届出を提出する
登記が無事終了したら、税務署に対して「法人設立届出書」という書類を、会社設立から2ヶ月以内に提出します。この時に定款や登記事項証明書、株主名簿(株式会社の場合)、設立趣意書、貸借対照表、法人番号(2016年から必須。届出時点で指定なしであれば記載なしでOK)が必要になります。事前に準備をしておきましょう。
社会保険に関する手続きを行う
従業員を雇う場合に必要になってくる手続きです。労働保険に加入する必要がある場合、労働基準監督署で手続きを行います。法人であれば事業規模に関わらず、健康保険と厚生年金保険への加入も義務とされているので、忘れないように手続きをしておきましょう。こちらの手続きは年金事務所で行う様です。
株式会社と合同会社
法人を設立する際の会社の形態として、「株式会社」「合同会社」の2種類があります。合同会社の場合、登録免許税が最低6万円からである事から最初の設立コストが低いというメリットが挙げられますが、後々の会社の規模を大きくしたりする可能性や、資金調達がしやすいという可能性を考えると「株式会社」として法人を設立するのが無難かと思います。一概にどちらが良いとは言えませんが、VC等から資金調達を受ける際には株式会社として設立するのがメジャーな様です(持ち株をそれぞれで分割するため)。
起業準備に必要なモノや心構え
定款を作成する際にも必要になってくるのですが、起業するためには綿密な準備が必要になります。初めて起業する人は、予想以上に時間がかかると思っておいた方が良いでしょう。まずは以下の事項を詳細に決めておく必要があります。
・発起人(会社設立の代表者)の決定
・事業目的の決定
・会社名(商号)の決定
・本店所在地の決定
・事業年度の決定
・株式譲渡制限会社にするか否かの判断
・会社の役員構成
・資本金の額と株主の決定
その他にも家族の了承や、起業にかかるコストも把握しておき事前に準備をしておく必要があります。
事業計画書を作る
今後どのように事業を進めていくか、売上高や損益計算はどのようになっていくかをまとめた「事業計画書」を作ることを推奨します。
事業計画書の作成は骨の折れる作業でかなり難しいですが、自分が設立する会社のビジョンが整理されて今後の見通しがつくので、数字や文字でしっかりと視覚化しておくと役に立つでしょう。
印鑑の準備をしておく
法人設立に必要な印鑑の準備を怠ってはいけません。実印・銀行印・角印の3種類を全て用意しておきましょう。そのため、会社名を早めに決める必要があります。意識しておきましょう。
起業するための資金準備をしておく
事業を開始すると、多くの資金が必要になる場合が多いです。そのため起業資金を事前に準備しておくことは非常に重要です。
近年ではVCが株主となり資金調達を行う企業が増加しています 。VCから資金調達を受ける場合は株の配分に注意して資金調達を受ける様にしましょう。経営権を奪われてしまうリスクを常に念頭に置きましょう。
基本的には銀行の預金をしておくことをおすすめします。もっとも、自己資金の範囲内で起業するのが理想ですが多くの場合は銀行やその他の団体から融資をうけることでしょう。預金を計画的にしておくことで資金を蓄えるだけでなく、計画的に貯蓄ができることをアピールすることで金融機関への信用度をあげる事ができます。いざという時に銀行から融資を受けやすくなるので、おすすめです。しかしながら小規模の会社であれば(特に設立当初であれば)大手銀行からの融資を受けることは難しいので、事前に地域金融機関に預金口座を開き、地域に密着した金融機関から融資を受けるという手段を取るのも戦略の1つです。
他企業から出資を受ける場合も注意が必要です。株式において他企業の出資比率が50%を超えると事実上経営権を奪取されたことになるので、注意しましょう。また、3分の1以上の出資比率となっても重要な経営判断がその企業の了解なく進められるのでここも気をつけたい部分です。
また、クレジットカードや公共料金の滞納は避ける様にしましょう。滞納履歴は融資の際に参考にされるので、過去に支払いに支障があった場合、融資を受けにくくなってしまうからです。
ホームページを準備しておく
インターネット世代の今、ホームページは会社を知るために必要な入り口・手段の1つです。ホームページがあるのとないのとでは、客観的信用度が全く異なります。会社を立てる際に同時にホームページを準備しておくと良いでしょう。
できるだけ早い段階で人集めをしておく
会社を設立してから求人を出すとコストになります。規模が大きいとそこまで気にならないのですが、会社の規模が小さいと求人のコストは考えものです。できるだけ人材を集めておくのも重要な項目かもしれません。また、ウォンデットリー等を利用して安価に人材を募集するのもありでしょう。
家族や配偶者の了承を得ておく
実は最も重要な準備かもしれません。起業にはリスクがつきものなので、必ず家族の了承を得ておきましょう。また、起業を了承された上での家族のサポートほど助かる事はありません。育ててくれた親や、いつも支えてくれる配偶者に感謝して起業へのマインドを固めておきましょう。
おわりに
起業の方法・手続き、そして起業するために必要なガイドを示しました。起業するためには複雑な手続きを踏む必要があるため、しっかりと知識をつけて準備をすることが大切です。ここに書いた事以外にも知っておかなければならないファイナンスの知識や、細かい書類作成の注意点、準備等がありますが、困ったことや不安な事があればとにかく専門家に聞いてみるのがオススメです。
自分で知識を持っているのに越した事はないですが、1人ではどうしても限界があるので、実際に起業した人に話を聞いてみたり、サポートしてもらうのも1つの手段かと思います。
会社を設立しようと思っている方の参考になれば幸いです。
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